私がなぜ遺言を書いたか?

医学博士 長谷川嘉哉

★医者公式写真私は、45歳になったとき遺言を書きました。その話をすると多くの方々から、その若さでなぜ?と怪訝な顔をされました。中には、家族以外に残したい人(愛人?)でもいるのかと勘繰られることさえありました。もちろん私には、そんな人はいません。この年齢で遺言を書いた理由は、医師としての体験に基づきます。私は、脳血管障害や認知症を中心に診療を行っています。そこで、“人間は突然死ぬ”そして“認知症になると遺言を書けない”ということを学びました。突然死の原因としては心筋梗塞や脳動脈瘤破裂の頻度が主です。いずれの疾患も40歳を超えれば、誰もかかる可能性がある病気です。一方、認知症の患者さんは462万人、その前段階の早期認知症の方で約400万人いるとされます。人口比で言えば、65歳を超えた7人に2人は認知症、もしくは早期認知症なのです。この数字を見るだけでも、できるだけ若い年齢で遺言を書くことは意味があるのです。ところで、私が遺言を書いて気が付いたことがあります。遺言は、財産分割のためだけに書くのではありません。最大の目的は、家族に最後の言葉を残すことです。どれだけ工夫をしても財産を平等に分割することはできません。しかし残された家族に対する愛情だけは、平等に残す事ができるのです。遺言は、『残された家族への最後の言葉』であることも知っていただきたいと思います。